闘え!うどんガール

2004年6月15日

滋賀県のとある街に、秘密結社『悪魔堂』のアジトがある。
悪魔堂の首謀者の名は、J・マツクニ。
彼は滋賀県を征服しようと、日々悪さを働いていた。
「新しい生物兵器は完成したか」
マツクニは、グスタポ博士に言った。
「イエス、Mr.マツクニ」
グスタポ博士は答えた。
彼はマツクニに雇われた、D国の科学者である。
生物工学の研究が自由にできると聞き、日本にやってきたのだった。
「今回は、どんなモンスターをつくったのだ」
マツクニは訊いた。
「はい、ビワコオオナマズから生まれたモンスターでございます」
グスタポは答えた。
「ふふふ、それは素晴らしい」
マツクニは笑みを浮かべた。
「いつでも、地上に解き放てる準備はできています」
グスタポはマツクニに言った。

県立篠原高校2年8組の教室。
香川コムギは、英語の授業を受けていた。
彼女は英語が苦手で、ねむたそうに先生の話を聞いていた。
(ふぁ〜、退屈だな〜)
そう思っていると、彼女の携帯にメールの着信があった。
彼女は先生の目を盗んで、メールの確認をした。
父からだった。
『コムギ、事件発生だ。今すぐ西山町3丁目に急行してくれ』
彼女は先生に腹痛を訴えて、学校を抜け出した。
そして、自転車をせっせとこいで、西山町へと向かった。
3丁目に入る手前で、父がトラックを停めて待っていた。
「何があったの」
彼女は父に訊いた。
「この先で、ナマズのモンスターが暴れているんだ」
父はナマズのように、体をくねらせて言った。
「何をふざけてるのよ」
「すまん、すまん、オスマンサンコン」
「バカ」
彼女は父に蹴りを入れた。
「あイタ〜、おーイタ、大分県」
「さっさと、変身の準備してよ!」
「ラジャー、ブラジャー、パンティー」
父はトラックの荷台に積んである、変身マシーンの電源を入れた。
コムギは変身マシーンの中に入った。
「スイッチ、オーン!」
父がボタンを押した。
変身マシーンからまばゆい光が。
何秒かして、光がおさまった。
すると、うどんに身をつつみ、両手に麺棒を持ったコムギが、
変身マシーンから出てきた。
そして、
「どんな敵でも、のばしてみせるわ。正義のヒロインうどんガールよ!」
と、言った。
「何を格好つけてるんだ。はやく行け」
コムギは父に言われた。
「わかってるわよ」
彼女はナマズのモンスターの所へと走った。

「ほら、ヌルヌルだろう。気持ちわるいだろう、ほぉらヌルヌル」
ビワコオオナマズのモンスターが、次々に人の家に入り込んで、
家中をヌルヌルして暴れている。
「きゃ〜、やめて。それはイタリア製の高い家具なのよ」
おばさんが叫んだ。
「うるせ〜な、ババァ。オマエさんも、ヌルヌルにしてやるよ」
モンスターはおばさんに抱きついた。
「ギャー、気持ち悪い〜」
おばさんはヌルヌルにされてしまった。
それを見ていた小学生の息子が泣きだした。
「うわ〜ん。ママが、ママが」
「小僧もヌルヌルにしてやろう」
モンスターは、男の子に抱きつこうとした。
男の子は泣きながら、家の外へと逃げた。
「まて小僧!」
モンスターは、男の子を追いかけた。
「うわーん」
「まてコラー!」
男の子がモンスターにつかまりそうになったその時、
うどん麺が飛んできて、モンスターの足に絡みついた。
モンスターは足をとられて倒れた。
「いてぇな。誰だ、こんなことをする奴は」
モンスターは、あたりを見回した。
「上よ、上」
空から声がした。
「上?」
モンスターが空を見上げた。
すると、空からコムギが飛び降りてきた。
そして、着地と同時に、麺棒をモンスターの頭に振り下ろした。
ゴーンといい音がなった。
「あへぇ〜」
その一発で、モンスターはのびてしまった。
「もう、おしまい? コシのないヤツね。コシのないヤツはキライよ」
コムギは言った。
そこへ、さきほどの男の子がやってきた。
「おねぇさん、ありがとう」
「ケガはなかった?」
「うん、大丈夫」
「そう。よかった」
「あの〜」
「どうしたの」
「あの〜、おねぇさんは、ウルトラマン?」
「ううん、わたしはね、正義のヒロイン、うどんガールよ!!」
「うどんガール!?」
「そうよ、うどんが大好きな、うどんガールよ。応援してね」
「うん!」

びわ湖の浜辺。
夕日が湖面に反射して、キラキラと輝いている。
コムギと父は、トラックからビワコオオナマズのモンスターを担ぎ出した。
「おい、起きろ」
父はモンスターのほっぺたをぶった。
「う〜ん、ムニャムニャ。なんだ?」
「起きなさい! また麺棒でなぐられたいの!」
モンスターはコムギの顔を見て、飛び起きた。
「ごめんなさい、もうしませんから、もうしませんから〜」
「わかったわよ」
「ありがとうございますぅー」
「もう二度と他人に迷惑をかけちゃダメよ」
「わかりました」
「あなたはビワコオオナマズなんだから、びわ湖にお帰り」
「はい、どうもお世話かけます」
ビワコオオナマズのモンスターは、びわ湖へ姿を消していった。

悪魔堂のアジトでは、J・マツクニが酒をあおっていた。
「どないなっとるねん、グスタポよ。あんなヘボいモンスターつくりやがって」
「すみません。次は必ず、滋賀県を征服できるモンスターをつくりますので」
「本当か」
「はい。次は必ず、つくってみせます」
「わかった。今回は許したろう。しかし、次がダメならわかってるな」
「……。どうなるのでしょう」
「おしりペンペンの刑じゃい! わかったかー」
「どひゃ〜」

滋賀の夜は更けていった。

 
 

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