紅の豚’
2004年3月9日不破が街を歩いていると、豚足を売っている露店があった。
美味しそうだなと思いつつ、店の前を通り過ぎようとした。
すると、店の老女が「おにいさん、ちょっと試食していきなはれ」と言って、豚足をつまようじにさして、差し出してきた。
彼は豚足を受け取ると、口に放り込んだ。
「うぐっ」
見た感じは、美味しそうなのに、吐きそうなくらいマズイ。
彼は「また今度買いにきます」と言って、そそくさと店を離れた。
しばらく歩いていると、お腹の調子がおかしくなってきた。
「さっきの豚足、腐ってたんちゃうか」
彼はお腹に手を当てた。
時が経つにつれて、お腹の痛みは増し、さらに眩暈もしてきた。
不破は立っていられず、道路にしゃがみこんだ。
そして、気を失って倒れてしまった。
「ブヒッ」
豚の鳴き声がして、不破は目を覚ました。
どこに豚がいるのだろうと思い、まわりを探しても豚はいなかった。
「ハッキリと豚の鳴き声がしたのに、おかしいなブヒッ」
そう言って、首をかしげた。
が、首を上手く動かせない。
なんでやと思って、自分の体を見てみると、豚になっていた。
「なんじゃこりゃー」
「やっと目を覚ましたか、この豚野郎!」
不破の背後から、聞き覚えのある声がした。
振り返ると、露店で豚足を売っていた老女がいた。
「お前はさっきのブヒッ」
「うるさいよ、この豚野郎! こっちへ来い!」
「オレを豚にしたのは、お前かブヒッ」
「豚に質問する権利はないわい!」
老女はムチを取り出して、ビュンビュンと振り回した。
「ワタシの命令を聞かないと、痛い目にあうよ!」
「うるせぇ、このババァ。元に戻せブヒッ」
「豚が生意気を言うんじゃないよ!」
老女は、不破の背中をムチで打った。
「いてぇ〜」
「ババァって言うんじゃないよ!女王様とお呼び!」
「くっそ〜、元に戻せババァ」
「元になんて戻さないよ。アンタは豚丼の肉になるんだよ!」
「豚丼の肉ってなんやねんブヒッ」
「つべこべ言わずに、このトラックの荷台に乗れ!豚野郎がよ」
不破はムチで打たれて、停めてあったトラックの荷台にのせられた。
荷台の扉には、しっかりと鍵がかけられた。
トラックは走りだした。
『豚丼の凶野屋』の前で、トラックは停まった。
しばらくすると、凶野屋から、店主のオヤジが出てきた。
「毎度おおきに。今日もええ豚が手に入りましたか」
「元気な豚が手に入っとるよ。ウヒャヒャヒャヒャ〜」
「どれどれ見せてください」
荷台の窓から、店主は中を覗いた。
「まるまると太った、なかなかの豚ですな」
「そうじゃろ。ウヒャヒャヒャ〜」
荷台にいる不破は、逃げるチャンスを窺っていた。
老女が荷台の扉を開けた。
「さぁ、出てきな豚野郎!」
不破は店主を油断さすために、ゆっくりと外に出ようとした。
「のろまな豚やな」
店主は言った。
「逃げんように、注意した方がよろしいで。ウシャシャシャ〜」
「こんな、のろまな豚は、逃がしまへんて」
「それやったら、ええんじゃ。ウシャシャシャ〜」
不破は荷台から、のっそりのっそりと降りた。
そして、店主と老女の気が緩むスキを狙った。
「今だブヒッ」
彼は一目散に逃げた。
「待てコラァー!」
店主が手に包丁を持って追いかけてきた。
「待てと言われて、待つバカはいないブヒッ」
不破は必死に走るものの、豚なので、スピードが出ない。
「やばいブヒッ、つかまるブヒッ」
彼はビルの中へ逃げ込んだ。
「待てコラー!」
店主も不破を追って、ビルの中に入った。
不破は階段を駆けのぼった。
店主が血眼になって、追いかけてくる。
不破は屋上までやってきた。
これ以上、逃げる場所がない。
「どうしようブヒッ」
店主が屋上までのぼってきた。
「おとなしく、豚丼になれ!」
「嫌だブヒッ」
「美味い豚丼にしてやるから、あきらめろ!」
「それなら、お前が豚になったらいいだろ」
「俺は豚丼をつくる人なんだよ」
「うるさいブヒッ」
店主は不破との距離を、じりじりとつめていった。
不破はフェンスを背にしていて、逃げ場所がない。
「観念しやがれっ、死ねぇ〜!」
店主は包丁を構えて、不破目がけて突進してきた。
「ギャ〜助けてぇ」
不破は死に物狂いでフェンスをよじのぼった。
そして、イチかバチかで、隣のビルの屋上へとジャンプした。
「うおりゃあ〜」
「なんて事だ。豚が飛んだ!」
店主は目をまんまるにした。
不破は、見事に隣のビルに飛び移った。
「まさか、豚が飛ぶなんて……」
店主はつぶやいた。
「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ」
不破はそう言い残して、去って行った。
老女の魔法は一晩で効力を失い、不破は元の姿に戻れたとさ。
めでたし、めでたし。
美味しそうだなと思いつつ、店の前を通り過ぎようとした。
すると、店の老女が「おにいさん、ちょっと試食していきなはれ」と言って、豚足をつまようじにさして、差し出してきた。
彼は豚足を受け取ると、口に放り込んだ。
「うぐっ」
見た感じは、美味しそうなのに、吐きそうなくらいマズイ。
彼は「また今度買いにきます」と言って、そそくさと店を離れた。
しばらく歩いていると、お腹の調子がおかしくなってきた。
「さっきの豚足、腐ってたんちゃうか」
彼はお腹に手を当てた。
時が経つにつれて、お腹の痛みは増し、さらに眩暈もしてきた。
不破は立っていられず、道路にしゃがみこんだ。
そして、気を失って倒れてしまった。
「ブヒッ」
豚の鳴き声がして、不破は目を覚ました。
どこに豚がいるのだろうと思い、まわりを探しても豚はいなかった。
「ハッキリと豚の鳴き声がしたのに、おかしいなブヒッ」
そう言って、首をかしげた。
が、首を上手く動かせない。
なんでやと思って、自分の体を見てみると、豚になっていた。
「なんじゃこりゃー」
「やっと目を覚ましたか、この豚野郎!」
不破の背後から、聞き覚えのある声がした。
振り返ると、露店で豚足を売っていた老女がいた。
「お前はさっきのブヒッ」
「うるさいよ、この豚野郎! こっちへ来い!」
「オレを豚にしたのは、お前かブヒッ」
「豚に質問する権利はないわい!」
老女はムチを取り出して、ビュンビュンと振り回した。
「ワタシの命令を聞かないと、痛い目にあうよ!」
「うるせぇ、このババァ。元に戻せブヒッ」
「豚が生意気を言うんじゃないよ!」
老女は、不破の背中をムチで打った。
「いてぇ〜」
「ババァって言うんじゃないよ!女王様とお呼び!」
「くっそ〜、元に戻せババァ」
「元になんて戻さないよ。アンタは豚丼の肉になるんだよ!」
「豚丼の肉ってなんやねんブヒッ」
「つべこべ言わずに、このトラックの荷台に乗れ!豚野郎がよ」
不破はムチで打たれて、停めてあったトラックの荷台にのせられた。
荷台の扉には、しっかりと鍵がかけられた。
トラックは走りだした。
『豚丼の凶野屋』の前で、トラックは停まった。
しばらくすると、凶野屋から、店主のオヤジが出てきた。
「毎度おおきに。今日もええ豚が手に入りましたか」
「元気な豚が手に入っとるよ。ウヒャヒャヒャヒャ〜」
「どれどれ見せてください」
荷台の窓から、店主は中を覗いた。
「まるまると太った、なかなかの豚ですな」
「そうじゃろ。ウヒャヒャヒャ〜」
荷台にいる不破は、逃げるチャンスを窺っていた。
老女が荷台の扉を開けた。
「さぁ、出てきな豚野郎!」
不破は店主を油断さすために、ゆっくりと外に出ようとした。
「のろまな豚やな」
店主は言った。
「逃げんように、注意した方がよろしいで。ウシャシャシャ〜」
「こんな、のろまな豚は、逃がしまへんて」
「それやったら、ええんじゃ。ウシャシャシャ〜」
不破は荷台から、のっそりのっそりと降りた。
そして、店主と老女の気が緩むスキを狙った。
「今だブヒッ」
彼は一目散に逃げた。
「待てコラァー!」
店主が手に包丁を持って追いかけてきた。
「待てと言われて、待つバカはいないブヒッ」
不破は必死に走るものの、豚なので、スピードが出ない。
「やばいブヒッ、つかまるブヒッ」
彼はビルの中へ逃げ込んだ。
「待てコラー!」
店主も不破を追って、ビルの中に入った。
不破は階段を駆けのぼった。
店主が血眼になって、追いかけてくる。
不破は屋上までやってきた。
これ以上、逃げる場所がない。
「どうしようブヒッ」
店主が屋上までのぼってきた。
「おとなしく、豚丼になれ!」
「嫌だブヒッ」
「美味い豚丼にしてやるから、あきらめろ!」
「それなら、お前が豚になったらいいだろ」
「俺は豚丼をつくる人なんだよ」
「うるさいブヒッ」
店主は不破との距離を、じりじりとつめていった。
不破はフェンスを背にしていて、逃げ場所がない。
「観念しやがれっ、死ねぇ〜!」
店主は包丁を構えて、不破目がけて突進してきた。
「ギャ〜助けてぇ」
不破は死に物狂いでフェンスをよじのぼった。
そして、イチかバチかで、隣のビルの屋上へとジャンプした。
「うおりゃあ〜」
「なんて事だ。豚が飛んだ!」
店主は目をまんまるにした。
不破は、見事に隣のビルに飛び移った。
「まさか、豚が飛ぶなんて……」
店主はつぶやいた。
「飛ばねぇ豚は、ただの豚だ」
不破はそう言い残して、去って行った。
老女の魔法は一晩で効力を失い、不破は元の姿に戻れたとさ。
めでたし、めでたし。
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