わけわからん

2003年10月8日
シゲルは、ミサキの家をはじめて訪れた。
玄関で靴を脱ぎ、家にあがると、ミサキが「あの緑色のドアの部屋は、絶対にのぞいたらだめよ」と言った。
シゲルは「うん」とこたえた。
ミサキの部屋で、ふたりは借りてきたビデオを観た。
映画を観おわると、突然ミサキが「ちょっと用事を思い出したから、待ってて」と言って、部屋を出て行った。
しかし、なかなかミサキが戻ってこない。
シゲルは、どうしたのだろうと思い、ミサキをさがす事にした。
ミサキの部屋を出ると、緑色のドアが目に入った。
「のぞいてはダメよ」とミサキに言われた部屋だ。
シゲルは、部屋の中に、何があるのか気になった。
でも、ミサキに禁止されている。
シゲルは、緑色のドアに近づいた。
開けようか、開けまいか。
シゲルは迷った。
興味を押さえきれなくなり、とうとうシゲルは、ドアを開けた。
すると、そこには、サンバの格好をしたミサキが踊り狂っていた。
ヘッドホンでサンバを聴きながら、クネクネ腰を振っている。
ミサキは、部屋に入ってきたシゲルに気づいた。
そして、シゲルに背を向けた。
「のぞかないでって、言ったじゃない」
「で、でも……」
シゲルは混乱して言葉が出ない。
「シゲルには、秘密にしておきたかったのに」
「秘密?」
「わたしの事、嫌いにならないで。約束して」
「そ、それは……。うん」
「実は、わたし、サンバ中毒なの」
「サンバ中毒?」
「3時間に1回はサンバを踊らないと、気がおかしくなっちゃうの。わたしって変でしょ、変でしょ」
ミサキは、そう言うと、しゃがみこんで泣いた。
シゲルの目の前で、サンバの露出度が高い色鮮やかな衣装を着たミサキが、背中についた大きな羽を揺らしながら泣いている。
「変なんかじゃないよ、僕だってサンバは好きさ、なはははー」
シゲルは、テレビで見たサンバを思いだして、ぎこちなく踊ってみせた。
「シゲルって、やさしいのね」
ミサキは泣くのをやめた。
「サンバ中毒でも、僕は平気さ」
そう言って、シゲルはミサキを抱きしめた。

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