あつしたちは、穴をのぞいた。
すると、穴の底でミネテルは「ここから出すざます」と怒っていた。
「もうねずみを襲わないって約束したら、出してやってもいい」
クップティが言った。
「そんな約束するわけがないざます。ねずみは大好物ざます」
「飼い主に食べ物をもらってるんだから、ねずみを襲わなくても大丈夫だろ」
あつしが言った。
「ねずみじゃなきゃ、イヤなんざます、イヤなんざますぅ〜」
「それじゃもういい、俺たちは帰るぞ」
クップティが言った。
そうやって、あつしたちと、ミネテルが言いあっているのを、イタチが隠れて見ていた。
イタチは、ミネテルを助けようと様子をうかがっていた。
みんな、穴の中を見ているので、背後にイタチがいるとは気づいていない。
イタチは、静かに近づいていった。
自分を縄で引っ張りまわしたフォティキュを、ミネテルの落ちた穴に突き落とそうと考えた。
音をたてないようにして、イタチは、ゆっくりと近づいてゆく。
ゆっくり、ゆっくり近づいてゆく。
と、その時、イタチの右足が、土にめりこんだ。
その瞬間、地面が崩れて、イタチは穴の中へ落ちていった。
実は、モグラが念のために、二つ落とし穴を掘っていたのだった。
「あれぇ〜」と、叫びながら、イタチは落ちた。
「今、誰かの叫び声が聞こえなかったか?」
クップティが言った。
「気のせいじゃないのか」
フォティキュが言った。
話し合いの結果、ミネテルは、ねずみを襲いませんと約束した。
ミネテルは、穴から、縄を使ってひっぱりあげられた。
「もう、悪さしたらダメだよ、ミネテル」
あつしは言った。
「あばよざます」と言って、ミネテルは去っていった。
あつしたちは、ねずみの国に帰ろうとした。
すると、もうひとつの穴から、「助けてくれー」という声が聞こえた。
のぞいてみると、イタチがいたので、ミネテルと同じ、ねずみを襲いませんと約束をさせて、穴からひっぱりあげた。
「ミネテル様〜」と言って、イタチは走っていった。
あつしたちは、モグラにお礼を言って、ねずみの国へと帰った。
ねずみの国に着くと、たくさんの人々が出迎えてくれた。
あつしたちが、宮殿に行くと、王様と王女様と、お姫さまが待っていた。
「これから、勇者達のためにパーティをひらこう」
王様が言った。
あつし、クップティ、フォティキュのために、パーティがひらかれた。
フォティキュは、おいしい食べ物がたくさん用意されて、大喜びだった。
あつしにとっては、ゲテモノばかりなので、どれも手をつけられなかった。
王様があつしの所にやってきて、「約束通り、人間の世界に戻るのを許可しよう」と、言った。
「今すぐにでも帰りたいです。お母さんと、お父さんに会いたいです」
あつしは言った。
「そうか、そうか。わかった」
王様は言った。
王様は、人間の世界へ戻れる道を知っているねずみを連れてきた。
あつしは、クップティ、フォティキュと抱擁して、別れを惜しんだ。
「クップティさん、フォティキュさん、どうもありがとうございました」
あつしは言った。
「元気でな」と、クップティが言った。
「忘れるなよ」と、フォティキュが言った。
あつしは、何度も後ろを振りかえりながら、宮殿をあとにした。
道案内のねずみに、連れられて、人間の世界に戻れる出口までやってきた。
あつしは、道案内のねずみに「サヨナラ」と言って、出口を抜けた。
すると、そこは、いつもと変わらない近所の公園があった。
「やったぁ、元の体に戻ってる」
あつしは、急いで家に帰った。
一晩家に帰らなかったから、きっと大騒ぎになっているだろうとあつしは思った。
家に入ると、「お帰り、あっちゃん。もうすぐ晩御飯よ」と普通に言った。
逢いたかったよと言って、あつしは母親に甘えようと思っていたのに、なんだか様子が変だ。
あつしは、あれっと思って、「僕、昨日から帰ってないよね」と訊いた。
そしたら、「晩御飯のしたくで忙しいのよ、テレビ見て待ってなさい」と言われた。
あつしが、テレビをつけると、火曜日にやっているアニメがやっていた。
昨日が火曜日で、今日は水曜日のはずなのに、おかしいなぁと、あつしは思った。
あつしが、混乱していると、外で「ミャーオ」と猫の鳴き声がした。
窓から外を見ると、ミネテルが、隣の家の塀の上を歩いていた。
ミネテルのヒゲは、片方なくなっていた。
「やっぱり、本当だったんだ」
あつしは、家族にねずみの国の事を話したけれど、誰も信じてくれなかった。
学校でも、友達に話したけれど、信じてもらえなかった。
公園に行って、ねずみの国に落ちた穴を探したけれど、どこにもなかった。
季節が春になった頃、あつしが友達とサッカーをしていると、つがいのねずみが、水のない用水路にいるのを見つけた。
そのねずみは、きっと、クップティとお姫さまだと、あつしは思った。
つがいのねずみは、仲良く駆けていった。
おはなしは、これでおしまい、おしまい。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索